自然と人のリズムを結ぶ農

 自然の中で人が培ってきた農は、同時に農を通して自然が人を作っているとも言えます。人の心身の健康から見た農には、太陽の光を浴びて睡眠のリズムや近視を改善する効果等、人の心身を健康に保つメカニズムを正す役割があります。同様に農は、個々人の心身にある自然なリズムを受け容れて、一人で、また集団での「業」を成り立たせます。

◆横浜市泉区中田にある社会法人開く会の「共働舎」にて、学生の時分に二週間程インターンをさせていただき学んだことは、器作り、園芸作業、パン製造、接客販売と複数の作業を設けて、障害の程度に合わせて自分が出来る作業をする場が確立しています。

◆藤沢市御所見地区には、養護学校の先生から農家となった「にこにこ農園」と長年の友である特定非営利活動法人「さんわーくかぐや」。重度障害を持っても、個性に見合った作業が見つかれば、斧をふるって薪を割り、鶏を育て野菜をつくる農作業を笑顔で取り組んでます。時には農園に悩みを抱える小学生の子も遊びにきて、農作業を眺めてたりちょっと手伝ったりしている場所にもなっています。

◆心身の不調で失った働きたく機会を取り戻し、何らかの働きづらさを解消したいと思う人々に向けて、農に触れて農を仕事として獲得してもらうプログラムを提供するNPO 法人「農スクール」。働き手が減っている農業界の担い手を育てて農業法人への就農を目指して、体力作り、技術習熟、グループ・他メンバーとの会話から理解等、自身の心身に応じながら段階を経て働く力を培っていきます。

◆私達が米作り体験をさせていただいてる「永田農園」は、家庭菜園からプロ農家までを対象に、多様な野菜苗・花苗を生産しています。ここでは農福連携も進めて働く場の基盤を整備し、「農スクール」からの実習生を受け入れて、農業法人に就職して働く姿を実体験する機会を提供しています。

”WBC”というラベルを考える(※野球ではない)

 消費者に安心安全な食を届けたい、おいしい!と感動してもらいたい、コロナ禍でも楽しいガーデニングライフを送ってほしい、、、農産品には、農産品の消費者・利用者に向けた、生産者からのメッセージが込められています。このメッセージは、取組主体である生産者のホームページやソーシャルメディアで発信されていますが、例えば海外の自然環境を守る農業技術で生産される”Agro Forest”や、相応の価格で流通される”Fair Trade” 等、商品自体にラベルが貼られています。

 それでは上記のように社会貢献している農産品について、ファーマーズマーケット、オーガニック商品店、地元のスーパー、大手ホームセンター等で、どのようなラベルがついているでしょうか?

 減農薬、無農薬、有機栽培、オーガニック等、生産方法に関するラベルは市場に浸透し、もはや当たり前ともいえるほどあちこちで見られます。一方で、その生産者の心身を健康にする企業経営・オーナー等に関するラベルは、CSR、CSV、SDGs、健康経営等も用意されています。一つの商品をつくる多くの人々・組織・産業の協働・連関については、Social Capital、社会関係性資本という表現もあります。しかしながらまだまだ一般商品にラベルが貼りつけられるほど浸透しているものではありません。

 自然と人のリズムを合わせる仕事を生み出す農をきっかけとして、このような経営を行う組織や商品のラベルとして、”Well-Being Community” (WBC) を創り出していきたいと思います。

<作成公開 2023年4月3日>

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